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「ふむ、ふむ」
「どうですか、掛りさうかね」
そんな風におぼえていてくれるとは思ひがけなかつた。
「はい」
思はず口に出かゝつたが、慌ててのみこんだ。彼の頭には今やすべてが明かになつた。土工仲間の刃傷沙汰だつた。その息づまるやうな情景が頭に閃ひらめいた。
喜作は、
「さうだ、君はあの時の射撃大会に出たさうだね」
「その姿は見えないのですが……。」
孫息子に手つだはれて、そろそろと縁側に腰を下すと、道平は何か云ひたげに盛子の顔を見まもつた。そして思ふことがうまく口に出ないときにやる、一心な、どこか苛々いらいらした目つきになりながら、殆ど癇癪を起しさうになりながら、やつと云つた。
小谷は房一に話しかけた。
と、いきなり云つた。
「なに?競馬のこと?」